日韓貿易問題ーG・SOMIA

動かない日本に不満 韓国政府
時事通信社

日本の対応に意見を述べる韓国の文在寅大統領=2019年8月、ソウル(EPA時事)
 【ソウル時事】韓国政府が2日、日本政府の輸出管理強化に関し、世界貿易機関WTO)への提訴手続きを再開する意向を発表したのは、管理体制の改善策を講じてきたものの、一向に措置撤廃へと動かない日本に不満を募らせたためとみられる。7月には措置発動から1年が経過することもあり、国内世論を意識し、事態打開に先手を打った可能性がある。

 「依然、不確実性が残っている状態で、こうした問題は必ず解消すべきだと判断した」。韓国産業通商資源省の羅承植貿易投資室長は2日の記者会見で、半導体材料が支障なく日本から輸入されていることなどを韓国メディアから指摘されると反論した。

 韓国政府は昨年11月、自ら破棄を決定した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避を決めた際、日本との輸出管理をめぐる政策対話を条件にWTO提訴の手続きを停止すると発表。日本側の譲歩を引き出した形にすることで、破棄撤回への国内の批判を避けることに成功していた。

 その後、韓国は強気の対日姿勢とは裏腹に、措置撤廃に向け、一つずつ日本の懸案を解消。日本側は3月にテレビ会議で行われた局長級政策対話の後、韓国側が示した改善計画を「歓迎する」と表明し、対策を評価していた。

 だが、最大の懸案である元徴用工問題が進展せず、措置撤廃に動かない日本に対し、韓国はしびれを切らし始めた。文在寅大統領は昨年8月、「日本に二度と負けない」と語った。輸出管理強化から1年となる今年7月までに事態が動かなければ、国内で政権批判が高まる恐れもあった。

 日本政府関係者は「大統領府中枢で現状を好まない考えを持つ人物がいたのではないか」と推測する。ただ、韓国側は「(日本との)対話は続けていく」(羅室長)と柔軟な構えも示している。韓国がどこまで強硬な姿勢に踏み出すか日本側も見極める考えだ。