小林秀雄とマルクス()

小林秀雄マルクス

小林秀雄マルクス論の出処は何処か。私は、前回、小林秀雄の独特のマルクスの読み方が、小林秀雄の文芸批評作品にも、たとえば、「平家物語」論などの古典論にまで、そのまま応用されていることを見た。今回は、前後が逆になるが、小林秀雄のデビュー作である『様々なる意匠』において、すでに、小林秀雄の独特のマルクスの読み方、言い換えれば、小林秀雄的批評のスタイルは、完成されていことを確認しておきたい。少なくとも『様々なる意匠』の段階で、小林秀雄は、マルクス主義批判の方法論を、確立していた。私は 、前から繰り返し、言っているように、小林秀雄マルクス論は、マルクスマルクス主義、ないしはマルクス主義者を明確に区別するところにある。マルクスマルクス主義を区別し、「思考する人」としてのマルクスを擁護し、「他人の思考の模倣・反復」でしかないマルクス主義、ないしは「思考させられている人」としてのマルクス主義者を徹底的に批判する。それは、マルクス論だけに限らない。小林秀雄の全批評作品、全言論活動に流れている主調低音である。と言うと、私が、小林秀雄の批評の方法論を「理論」として語っているように見えるかもしれない。確かに 、私は、「理論」として語っている。しかし、少なくとも小林秀雄は、「理論」としては語っていない。